診断薬開発雑記

臨床検査試薬を開発するバイオ技術のブログ。誰かの役に立つかもしれない事を思い付くままに書いています。

データ解析

「測る」にも色々ありまして…

さて、私はイムノアッセイを専門に開発をして、濃度換算をする方法を説明してきたわけですが…
この方法は、measurementではなく、assayなんですね。

元々は「計量法」ではなく、「分析法」なんです。
血中に何万もある物質から、特定の物質だけを特異的に検出する分析法。

それに定規の役目をするキャリブレーターを測定しておく事で、「測定法」のまねごとをして検体中の濃度を推定するのがassayです。
測定原理図1
臨床検査で測る測定項目というものは、どこかに反応を介在して、その濃度を「推定する」という方法をとっているものです。

この「反応」が結構、癖があるものなんですよ。
イムノアッセイの場合は、「抗原抗体反応」。

だから臨床検査の測定法を正しく理解するために、「抗原抗体反応」の部分の性質を正しく理解しなくちゃいけないんです。

これから暫くはイムノアッセイ系を「作る」ところから解説していきたいと思います。主役は「抗体」です。

検量線を引いてみよう。

キャリブレータの測定値から、検量線を引く方法。
ここでは4係数ロジスティック曲線(4-parameter logistic curve)を使います。

「酵素免疫測定法」あたりの教科書も読んでね。
ここでは具体的なやり方を解説します。
Excelで簡単にできるんですよ。

① データを取得する
検量線1

濃度既知のキャリブレータを測って、その測定値を表にします。
このグラフにぴったり合うような検量線を描くのです。
ここで濃度0の測定値はバックグラウンドです。
必ず取得しましょう。
濃度∞の値は、抗原を高濃度に添加して測定すればOKです。
でも実験してれば「大体これくらい」という値がわかると思いますので、予測で入れてしまっても良いと思います。

② ロジスティック曲線の一般式に当てはめる
回帰式1

教科書に載っているロジスティック曲線の式。
+dっていうのは勝手に付け足しました。バックグラウンドの分です。
さっきの表から、以下のように対数を取って変換します。

検量線2

このように変換すると、キャリブレータの各点が一直線に並ぶのです。
そうすると最小二乗法を使って直線回帰ができる。
その傾きと切片から、式のαとβを求める事ができるのです。

③ 4係数ロジスティック曲線の係数に換算する。
回帰式2

この式は係数それぞれに意味があり、解析に都合が良いので重宝しています。
一般式の係数から、上式のb,cを計算します。
aとdは最初の表からそのまま引っ張ってきます。

検量線3

④ 検量線を実際に描いてみる

適当にxを設定して、それぞれのyを計算します。
これをグラフにスムージングを掛けて重ねます。

検量線4
完成です。

まあ重回帰でもできるんですけどね。ちょっと説明しにくいから。
一度対数変換し、直線回帰して係数を出す。最後に確認。
この方法が一番わかりやすいと思います。


プロフィール

技術者TH

Twitter プロフィール
バイオ系実験あるある等を気まぐれにつぶやいています。
楽天市場