前回までのおさらい
1. 私たちが今でもELISAを使っているのは、低コストかつ高感度を実現するため。
2. 容器や流通・品質管理コストの方が高くつくので、診断薬そのものは安価に作らなければいけない。
3. 財源は国民医療費

さて、話を本来の医療経済学に戻しましょうか。
やっと「財源は国民医療費」という伏線を回収します。

日本の国民医療費は、年間で42兆円となっています。
厚生労働省から「平成28年度 国民医療費の概況」という資料が出ています。

国内総生産(GDP)が539兆円(平成28年度)なので、ざっくり言えば日本の経済活動全体の7.8%が医療、ということです。
途方のない金額なので私たちには想像もつかないのが本音なのですが、2019年度に国家予算が100兆円を超えた、というのは記憶に新しい話ですので、国民医療費は国家予算と同じレベルで扱う大きさなのです。

国民医療費は増加していく傾向にありますので、このまま増え続けると国家レベルで懐事情が心配になりますね。
医療崩壊とか言ってマスコミが煽る原因の一部は、この医療費の問題です。

日本の医療費は世界から見ても高いのか、というとそうでもなく、2016年に対GDP比が第6位であったという報告もあります。

日本より上なのは、医療費高騰が社会問題になっているアメリカが断トツの1位、社会福祉に力を入れているヨーロッパ諸国がそれに続いています。

国ごとに医療制度が違うので、一概に金額が医療の質を表しているとはいえないのですが、日本には国民皆保険制度があるので、医療に関してお金を掛けられる環境にあるのです。

この先は政治家の領域ですので、このブログで書くことではないと思います。
興味のある方はぜひ調べてみてください。年金危機と同じような問題を抱えています。
国民医療費をただ減らせば良い、という事ではありません。いかに効率良く使っていくかが医療従事者の課題です。
質の高い検査を安く提供していく、という事が私たち技術者の課題です。

でもね、世の中には「日本市場は難しいから新興国市場を狙う」なんて言い出す人もいるんですよ。家電屋さんなんかにこういう話をされるの、正直うんざりです。
その国の医療保険制度はどうなっていて、財源はどれくらいありますか?ぐらいの突っ込みを入れると、決まってこう言うのです。
「今後の課題とさせていただきます。」
それ、『何も考えていませんでした』を誤魔化すビジネス用語ですよね。そんなの覚えるより真面目に勉強しましょうよ。