前回までのおさらい。
1.医療行為の値段は(あまり高くない値段で)決まっている。
2.お客様に「いくらの利益になりますよ」という売り方をする
3.財源は国民医療費

まず1と2から、コストについて考えてみましょう。
1については、CRPで16点=160円という例を出しましたが、一般的なイムノアッセイで測定する検査項目では80~150点、つまり800円~1500円といった所でしょうか。
2について、この値段から、お客さんの利益が出るように商品の値段を設定する訳です。
当然、あまり儲からない商品は買ってもらえない訳ですから、何割かはお客さんの利益分として設定し、残りの何割かを商品の値段に設定する、という事になります。
表には出ないけど、これが診断薬の希望小売価格ですね。

ここからは一般的な商品と同じ仕組みになってきます。
まずは小売り店の儲け分を引いた、本当の商品価格を決める事になります。仕切り値(しきりね)というものですね。
流通だってタダじゃありません。ちゃんとした販売経路を持っておかないと商品は売れません。
この辺は営業さんの領域ですね。

メーカー内でも流通コストは掛かります。何より在庫管理コストが物凄く掛かります。
在庫過多の恐ろしさは、調べればいくらでも出てくる事でしょう。
診断薬には有効期限があるから大量に製造して売れないと廃棄が出るし、在庫を減らしすぎて欠品なんか起こすと医療行為である検査ができなくなってしまうので絶対だめ。このため在庫管理は民生品と比べものにならないぐらい重要なのです。

さらに品質管理コスト。医療に使うものですから、品質第一ですね。
管理体制、チェック体制を何重にも巡らせているので、その分膨大なコストが掛かります。

この時点で、商品の製造以外のコストが相当掛かっている、というのはお察しいただけるかと思います。

いよいよ商品を作るコスト。私たち技術者が設計できるのは、やっとここからです。
ざっくり製造工数と材料費。一般的な会計用語では固定費と変動費と呼ばれるものです。

もちろんこのブログで実際の金額を書く訳にはいきません。
ただ「お医者さん相手の商売だから儲かるでしょう」と言っている方々が想像しているより、遙かにエグい金額だということは確かです。

私たちが開発しているのは、贅沢品の類いでは全くありません。
完全に業務用、薄利多売のビジネスです。
まずはとにかく安く、それでいて高品質高性能。
車に例えるなら、高級スポーツカーではなく、商用車や軽トラックを開発しているような感覚なのです。

コストの話はまだ続きます。
まだまだ削られるんですよ。