臨床検査というのは、もちろん医療に携わるものです。
私たちが作っている診断薬は、間接的ですが医療に携わっています。

ところが世間では、
「お医者さんってお金持ちなんでしょう。だって良い車に乗ってるじゃない。お医者さん相手の商売なんだから、儲かるんでしょ?」
なんて思ってる人、結構いるんです。
私なんか家族からも言われていますよ。

まあ、家族に言われる分には、まだいいんですよ。
「そういう所もあるけれど、現実は結構シビアなんだよ」とか言って誤魔化しています。

面倒なのがバイオ企業と家電メーカー。
いい歳したお偉いさんが「臨床検査事業への参入を目指す」とか言いだして、話を聞いてみると、「大きな市場がある」「成長が見込まれる」とか。
きっと富士経済をコピペした3C分析のパワポ作った奴がいて、まんまと騙されたんですよ。

まず、お医者さんってだけでお金持ちとは限らない。
「公立病院 赤字」で検索してみれば、わかると思います。
お金持ちのお医者さんもいるけど、そういう方は休む暇もないぐらい働いているんですよ。

次に、臨床検査は単価が決まっている。これは医療行為全般に言える事。
例えばイムノアッセイで有名な炎症マーカー、CRPの診療報酬は16点。つまりCRPの検査をしても、お医者さんにとっては160円の収入にしかならないのです。
コンビニでバイトした方が、よほど儲かります。

それからお金持ちって言うのは、所得が多い人の事。
収入から経費を引いたのが所得ですね。
良い車を買うのは所得から、臨床検査の費用は経費から出すので別物です。

そのための検査試薬を、いくらで売りますか。
その試薬を作る材料は、いくらで仕入れてきて、どれくらいの工数で作りますか。
そこまで考えて設計に落とし込むのが私たち技術者の仕事なのです。

これから何回かに分けて、医療とお金の仕組みについて書いていきたいと思います。
誰もが憧れる、楽して儲かるような甘い話は、ここにはないんですよ。