必ずやらなくてはいけないのが、保存安定性試験です。
診断薬には有効期間(使用期限)を付けなくてはいけないので、その期間(製造後12ヶ月とか、18ヶ月とか)を保証するために、実際に保存した試薬で品質管理項目を満足する事をデータで証明する事になっています。

品質管理項目というのは、感度・正確性・同時再現性になりますので、大体次のような表を書いて申請する事になります。

保存安定性

昔はアレニウスプロットを使って加速試験をしていましたが、これは化学反応に適用されるもの。
タンパク質である抗体や酵素の評価に適用する妥当性が証明できないので、最近ではあまり実施しなくなりました。

ですので、試験としては試薬をたくさん仕込んでおいて、定期的に測定する、というだけです。
だいたいは12ヶ月ぐらいのデータで申請しておいて、その後データが取れ次第、18ヶ月とか24ヶ月に有効期間を延長する一部変更申請をすることが多いです。

とはいえ実際の開発では、12ヶ月も待つなんて流暢なことはやっていられません。
大抵は試薬の開発と並行、または次の試薬を開発しながら、という事になります。
試薬の組成を改良するたびに新しく保存安定性試験を仕込み直していると、きりがありません。ですので申請上の「反応系に関与する成分」以外の変更では、旧組成のままデータ取りを継続するのが普通かと思います。

その他にも色々、気苦労が絶えない試験でもあります。
・試薬の置き場所がわからなくなる(誰だよ勝手に動かしたやつ)
・装置が壊れる
・測定日にたまたま出張が入って、そのまま忘れる

ちなみに抗体はとても丈夫で、防腐剤さえ入っていれば1年や2年平気で保ちます。
試薬の安定性が悪い場合、それは酵素や基質の劣化、コンタミ(精製不十分)が原因の事が多いです。