「極めて有用」と考えている添加回収試験ですが、「万能とはいえない」という一面もあります。
添加回収試験ができない測定項目っていうのが、意外と多いのです。

・血清中で不安定なもの
 代表的なのがBNP。血中半減期が短い事が知られています。
 緊急検査としてはとても有用なのですが、開発するの大変だったことでしょう。

・血清タンパク質と結合してしまうもの
 遊離サイロキシン(Free T4)や遊離トリヨードサイロニン(Free T3)がこれに当たります。大部分のT4やT3は血清タンパク質と結合していて、結合していないT4やT3を測定するのがこれらの項目ですから、最初から添加回収試験の対象外です。一方で総サイロキシン(Total T4), 総トリヨードサイロニン(Total T3)は添加回収試験の対象になります。
 PSAもそうです。以前書いた通りα2マクログロブリンに捕まってしまいますので、添加回収試験をすると必ず低値に出る傾向があります。

・自己抗体が存在するもの
 インスリンの自己抗体は有名ですね。RIA法の発明に繋がった偉大な業績です。
 その他にもTSHなどのホルモンにも、気付いていないだけで実は自己抗体を持っている患者さんがたくさんいるそうです。

・立体構造が変化するもの
 ウイルス抗原で、必ず低値になる測定項目があります。
 腫瘍マーカーのような糖鎖抗原も、構造が変化しやすいと言われています。
 (出典が曖昧ですみません。)

このように添加回収試験は基本的な試験でありながら、世の中にあるイムノアッセイ法を使った測定項目では適用できない事が多々あります。
たまに「使えない試験」とおっしゃる方もいるのが残念な話です。
診断薬というのは臨床状態を良く反映する事が大事ですので、必ずしも測定法としての正しさが保証されているとは限らないのです。要は患者さんの治療方針を立てる手助けになるようなデータが出るのであれば、他の事は二の次でも構わない、ということです。