今回は直線性試験のお話です。
これは大変重要な試験なのです。

タンパク質の濃度を測る時に、分光光度計で吸光度を測っているでしょう。
これはLambert-Beerの法則を利用したもので、吸光度がモル濃度に比例するという現象を測定法に応用したものです。
ものを測る技術というのは、比例関係が基礎となっているものです。

臨床検査も同じです。
生化学検査なら酵素反応量を吸光度で測定しますし、
イムノアッセイ法なら抗原量を標識の量(蛍光強度や発光量)で測定します。
ほとんどの検査は、直線性が基になっているのです。

ですので、逆に言えば、抗原量が半分になれば標識の量も半分になるはず。
この原則が正しく機能しているかどうかを調べるのが希釈試験です。
抗原を濃くするのは手技として難しいので、希釈する方で直線性を試験することが多いです。

だいたいこんな感じです。

直線性a

元の試料と希釈液を、0:5, 1:4, 2:3, 3:2, 4:1, 5:0の割合で混合して、希釈試料を作ります。測定レンジが広い場合には、希釈系列を作る事もあります。
これを多重測定して、測定ばらつきの影響をできるだけ少なくします。
グラフにプロットして、ほぼ直線になっているかどうかを確認します。
抗原抗体反応が正しく測定値に反映されていれば、直線的に並ぶはずです。

ここで一つ注意があります。
イムノアッセイ法では検量線を引いて濃度換算している場合がほとんどだと思います。
ですので抗原量と、蛍光強度や発光量が必ずしも比例しているとは限りません。
でも検量線はそのような場合にも正しい濃度が計算できるように作られた物なので、濃度に換算してしまえば、基本的に比例関係になり、直線性が得られるはずです。

私たちは比例関係を調べて、「測れている」「測れていない」を判断しているのです。
直線性試験(希釈試験)は、抗原が正しく測れているかを確認する試験なのです。

それでは「正しく測れていない」のはどんな時なのか?
次回に続きます。