最後にLoQ。Limit of Quantificationの略。

元々は実効感度(Functional sensitivity)という言葉を使っていました。今でも通じると思います。
TSH(甲状腺刺激ホルモン)は指数関数のように濃度が変化するので、正規分布を仮定した2SD法やLoDの求め方では臨床と合わない、このため日差変動CV20%以下のfunctional limitが感度の指標として妥当であるとATA Guidelineで勧告したのが始まりだったと思います。私たちはみんなSpencerの論文を読んで勉強したものです。
この考え方が一般的に広まって、CLSIのEP17でも採用された時にLoQという言葉になったと記憶しています。

さて、Precision Profileと呼ばれる図をご存じでしょうか。
CVと濃度の関係を示したもので、縦軸にCV、横軸に濃度をとってプロットすると、一般的にはU字型のグラフが描かれます。

Precision Profile概念図

この図はイムノアッセイの重要な性質を教えてくれます。
  • CV=SD÷濃度なので、濃度が0に近づくほどCVが大きくなる。
  • 測定範囲には上限もある。
    (検量線の頭打ちとか、固相抗体のキャパシティ、酵素反応速度のVmaxなど)
  • CVが低くなる、得意な濃度範囲がある。
LoQを求める時に必要なのは、濃度0付近でCVが大きくなる性質です。

さて求め方。低値付近の濃度の試料を10例ほど作るか探すかして、1日2回ずつ、5日間に渡って測定します。
このとき蛍光強度ではなく、検量線で換算した濃度を使います。可能な限り丸め誤差を含まないように、有効数字に気をつけてデータを取得してください。
低値付近、というのはざっくりとした言い方ですが、大体の目安として、ブランク+1.645SDがLoB, +3.3SDがLoD, +10SDがLoQ、としている例があります

LoQ

CLSIでは前回と同じように合成標準偏差を求めろとか言ってますが、日本臨床化学会では普通にCVを計算して、Precision profileをプロットする方法を推奨しているようです。

Precision profile

このときCVのばらつきが気になることもありますが、そういうものだと思ってください。
気にせずにExcelで指数回帰して、回帰式からCV20%になる濃度を求めます。
(本当は双曲線回帰が良いのでしょうが、Excelのグラフでは難しいので。)

3回に渡ってLoB, LoD, LoQの説明をしてきましたが、いかがでしょうか。面倒くさい事この上ないですね。
こんな実験するくらいなら、臨床検体を一つでも多く測って測定系の信頼性を上げるべきだ、とか思ってしまいますけど。それは言いっこなし、ということで。