前回は精製抗原と天然抗原のズレの話をしましたが、実際には開発者は精製抗原を測る機会が多くあります。
特に遺伝子組み換え技術を用いて人工的に複製されたタンパク質、我々はリコンビナント抗原と言ったりしますが、食品でもない体外診断用医薬品用途には非常に多く使われております。

もちろんこうして作られた抗原は、フォールディングが同じとは限らないので立体構造が違ったり、糖鎖付加が全然違ったりと、天然抗原とは免疫学的に「似て非なるもの」です。
ですので前回お話ししたような「ズレ」は必ず起こります。
一種の「交差反応」と言えるでしょう。

反応性の比

にもかかわらず、リコンビナント抗原は重宝されています。

だって天然抗原にこだわって、疾患を持たれている患者さまの血液をかき集めて販売する訳にはいかないでしょう。
それよりは安定供給が可能で倫理的にも問題がない、リコンビナント抗原の方が診断薬原料として優れているからです。

以下のような試薬の主原料として使われています。

1. キャリブレーター
検量線を描くためのキャリブレーターにリコンビナント抗原がよく使われます。ただし、
検体が正しい値に測定されるように、表示値を少しずらしたりして調節しています。
ですので必ず、使用する試薬で指定されているキャリブレーターを使用してください。他社のものを流用すると、測定値が思わぬ方向にズレて、診断に影響を及ぼす恐れがあります。

2.コントロール(精度管理用物質)
本来ならプール血清を使って、毎日同じ値を示すことを確認するのが理想です。一昔前にはそうしていました。
簡便のため、キャリブレーターと同様の方法で作った代用品をコントロール物質として販売していることがあります。
コントロールの添付文書には、各社キットで測定したときの基準範囲が掲載されていますが、同じ物質を測るのにメーカー差があるのにお気付きでしょうか?
これは標準化が進んでいないから、という理由だけではなく、精製抗原を添加して作られたコントロールは天然抗原と微妙に異なる反応性を示してしまうためなのです。
つまり各社キットが採用している抗体の交差反応性の違いを反映しているのです。
そのことを踏まえて、日常の精度管理に役立てて頂けますと嬉しく思います。

3.サーベイ試料
これが我々技術者の頭痛の種なんです。胃も痛いです。
(次回に続きます。)