前回までのあらすじ:
PSA(前立腺特異抗原)検査は、学会と診断薬メーカーの努力のもと、ようやく標準化が完了し、普及して多くの前立腺がんを見つけて、患者さんの治療に活躍していきました。

…と、なるはずだったのですが、住民検診にPSAを入れることに関しては根強いアンチがいるのです。しかも国レベルで。
「PSA検査に公費を使うべきではない」
なんでそんなこと言うのー!

2007年頃、厚生労働省が発表したガイドラインの中で、PSAを住民検診から外すべきという内容が書き込まれてしまったのです。
これにはPSA検査の普及を推進していた泌尿器科学会が猛反発。

実はPSAは臨床有用性のエビデンスが明確になる前に測定法が確立してしまい、後で統計的に処理すると当落線上の微妙な位置にきてしまったと、ざっくり言えばそういう事なのです。
前立腺がん自体も場合によっては治療の必要がない場合もある(前立腺がんが原因で死んでない)とか、PSA自体もがんに特異的とはいえない(前立腺肥大症でも増加する)ので、そんな検査に税金を投入するほど国の医療費は潤沢ではない、と見なされた訳です。

そうは言うけど、PSA検査のおかげで前立腺がんが早期発見の役に立つのは明確で、近年前立腺がんの発見は増加しています。その点は評価されています

その後も2011年頃には米国PTSFがPSA検診を「適切でない」という勧告が出たりして、日本泌尿器科学会が頑張って反論しています。

現在では50才を過ぎたら、人間ドックのオプション検査として自己負担額数千円でやってくれるところがほとんどです。国や自治体が無料でやってくれる所まで到っていないのです。

このように苦難続きのPSA検査ですが、個人的な意見を言えば、我々が自分の健康をどこまで知りたいか、自分の健康とどう向き合って生きていくか自分で選択する時代になったということだと思います。知りたいならオプション検査で受ければ良いし、仮にがんが見つかっても、お医者さんと相談して自分にとって良い治療が受けられれば良い(治療しない方が良い、という場合もある)のです。

そのためにはPSA検査と前立腺がんについて我々自身が正しく勉強しておかなくちゃいけません。自分の健康は自分で管理する。

体外用診断薬を作っている技術者としては、こういう議論が起こるたびに「がんばれPSA検査」と思ってます。
お金がどこから出るかの問題だけであって、PSA検査は患者さんの健康の役に立つものだと確信しています。