私たちがイムノアッセイ試薬を開発するのに、まず必要なのが抗体です。
だいたいどこの会社にも、抗体を取る職人さんがいて、自社で開発しているのではないでしょうか。
もちろんその方法はトップシークレットです。
実際のところ、イムノアッセイ用試薬に適した抗体というのをどうやって作れば良いのか、実は解っていない、というのが現状かと思います。
何年掛かっても良い抗体が取れないということがザラにあります。

イムノアッセイ試薬に適した抗体とはどういうものか?
私の考えでは、検体中にある天然(Nativeな)抗原を良く捕らえる捕捉用抗体と、その捕捉用抗体と立体障害を起こさない、特異性の高い検出用抗体の組み合わせ。

ウエスタンブロット用の抗体なら簡単です。
リコンビナント抗原を変性させるなりペプチド合成するなりして作った抗原を免疫して、できた抗体をウエスタンかプレートでスクリーニングする。普通の抗体作成です。
でもそうしてできた抗体は、Nativeな抗原とは結合しなかったりして、イムノアッセイ用にはイマイチな事が殆どです。
各社いろんな工夫をしているとは思いますが、Nativeな抗原を認識する抗体をどうやって取るか、その方法論は確立されていないと思います。
だから、とにかくたくさん免疫して、数打ちゃ当たるとばかりにスクリーニングしまくる。
何万回もやって、1つか2つ当てたら大成功です。宝探しです。

抗体を外注で作成すると、大体上手くいかないです。
もう、最初の段階で話がかみ合わないことが殆どです。
「うちではこのような方法で抗体を作成しています」
パワポの説明資料が、最初から方法論ありき。
「スクリーニングはどのようにしていますか?」
「ELISAでやっています。」

見解の相違

いや、そのELISAは立体構造が崩れた抗原を認識する抗体を拾っちゃう原理ですから、と心の中で突っ込みながら、
それでも結局、数打ちゃ当たるのは変わらないので、その条件に持って行けるのなら話を進めましょう、という事になります。
(それで結局、上手くいったかどうかは内緒。)

困ったことに、学者さんとも話が合わないんですよ。
すぐKd(解離定数)が高い抗体とは何ぞや、とか語り出してしまうので。
Biacoreとか関係ないんです。数値が高いのが良い抗体じゃありません。
私たちはイムノアッセイ用の、Nativeな抗原を特異性高く捕らえる抗体が欲しいんです。