先日、生化学自動分析装置用の試薬の話になりまして、
「原理としては逆受身だから、抗原が過剰になるとプロゾーンが起こるんですよ」
とか話していたところ、後で若い技術者からこう言われました。
「プロゾーンは聞いたことあるんですが、『ぎゃくうけみ?』は聞いたことがなかったです。」

『逆受身』が死語になっている!
やばいぞ。教育が追いついていない。
そうだ、ブログ書こう。

簡単に言えば、担体粒子に抗体を結合させて、抗原によって凝集させる測定系を「逆受身」凝集法というのです。

逆受身凝集法

まず赤血球凝集法(Hemagglutination; HA法)というのがあります。血液型の検査なんかですね。
赤血球表面にA抗原(実は糖鎖)があると、抗A抗体を含んだ試薬で凝集するのです。
A抗原があってB抗原がない人はA型、のように判定していくのです。

これを応用して、元々は赤血球上にない抗原を、人工的に結合する方法が開発されたらしいです。
こうすると、抗原に対する抗体が検出できます。
例えば、B型肝炎の表面抗原(私たちはHBs抗原と呼んでいます)を結合させると、血清中に抗HBs抗体がある場合には凝集するので、抗HBs抗体の検査に利用できるのです。
この方法を、受身凝集法(Passive Hemagglutination; PHA法)と呼んでいました。

受身免疫という言葉自体は、免疫学の用語で元々あったそうです。


さらにこれを応用して、赤血球に抗体を結合する方法が開発されました。
こうすると、先ほどの例でいえばHBs抗原の検査試薬ができるのです。
受身凝集法と比べると、抗原と抗体の関係が逆になっているので、逆受身凝集法(Reverse Passive Hemagglutination; RPHA法)と呼ばれているのです。


担体は赤血球から、ラテックス粒子などの人工物に変わりました。
そのたびに新しい測定法の名前ができたり(RPLA法とか)して、かえって混乱したのも思い出です。
今でもCLIAとかFPIAとか、学者さんって名称にこだわりますよね。

受身と逆受身については、こんなストーリーで説明してみました。
正直、合っているかどうかは自信がないところです。
こういったことを教えてくれた先輩方は、続々と定年退職されていっています。
昭和の時代にはブログもSNSもなかったから、論文になっていない言葉は消えていく運命なのでしょう。

また、思い出したものはこのブログで残していきたいと思っています。