次にLoB。Limit of Blankの略。
日本語では「ブランク限界」とか「ブランク上限」と言われます。
要するに、LoBを下回る測定値は、ブランクと見分けが付かない(有意差がない)と見なされる訳です。
さて、ここから実験方法が一気に面倒くさくなります。
まず、ブランクの試料を5~6検体用意します。
感染症なら陰性試料を6例、PSAなら(PSAがないはずの)女性の検体を6例、と簡単ですけど、そのほかの測定項目(腫瘍マーカーとかホルモンなど)では一般的に大変です。
健常人でも多少は抗原を含んでいることが多いので、アフィニティクロマトで除去するとか色々しないといけません。
「ブランク試料の定義って何?」と頭を抱えること必至。
もう、準備だけで一苦労。
その上、そういったブランク試料を5日間以上にわたって、合計60回以上測定しなくてはいけません。
例えば6例を一日2回ずつ、計5日間測定した場合、以下のようにまとめます。
ここでは測定値は濃度換算する前の、吸光度とか蛍光強度で統計処理しました。
こうして計算した平均+1.645SDを検量線で濃度換算すれば、LoBが計算できるのです。
2SD法に似ていますね。実際面倒くさいだけで意味は同じです。
ここでよくある話ですが、
「全自動機では測定値は濃度換算して出てくるんだから、マイナスの測定値は0に切り上げになるでしょ?そうしたら濃度換算した後の0が多いデータで計算した方がLoB低くなるじゃない。その方が得だよ。」
というズルをしようとする人がいます。
だめだよ。そんなの。
0で切り上げたデータは、正規分布していると見なすことができないでしょ?
SDを使って統計学的に算出する方法は、あくまで標本集団が正規分布していることが前提なんだから。
意味をよく考えないと、ただの算数になっちゃう。
このように、たかがブランクの試験をするだけでこの苦労。
普段使いには、とてもやらない試験です。
「論文書くぞ」「学会発表するぞ」「添付文書書くぞ」という機会でもないとやらないのが現実です。
さらに「CLSI EP17に準じて評価しました」とか言って、具体的な試験方法までは開示しないことが多いです。
とはいえ、「CLSI読め」とはお勧めできないのが正直な所。