診断薬開発雑記

臨床検査試薬を開発するバイオ技術のブログ。誰かの役に立つかもしれない事を思い付くままに書いています。

2018年04月

ピペットは口で吸わない

私たちが実験室で必ず教わる事に、
「ピペットは口で吸わない」
というのがあります。
もちろん、メスピペットやホールピペットのことです。

臨床検査に関わるラボでは共通の認識なのでしょう。
もちろん実験室は飲食禁止、退室時に手洗い必須、等々色々とルールはありますが、
実験器具は汚染されているものとして扱う、これが基本です。

ピペットは熱を掛けると歪むから滅菌できない、という解釈も間違いではないけれど、
滅菌済み
ディスポピペットでも、口で吸うことはありません。

ピペット操作には必ず、安全ピペッターを使っています。

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このような昔ながらの安全ピペッター、最近は見なくなりましたね。
操作方法だけは学生時代に習っていたけど、開発の仕事始めてからは頻繁に使っていました。

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このような充電式の安全ピペッター、今でも良く使ってます。
まあ充電忘れたり、コンセント全部塞がってたりで、使用頻度が少ない人にとってはイマイチ使い勝手が良くないですが。

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最近はこのタイプをよく使っています。電気使わないので手軽です。

時代と共に変わってきた実験器具の一つでもあります。
だいたい5mLまではエアークッション式ピペット、5~25mLまではメスピペット、25mL以上はメスシリンダーと使い分けています。

ところで凍結乾燥品のバイアルに超純水を加える時、ホールピペット使っていますか?
ホールピペットを正しく使うのも、知識と技術が必要で難しいのです。
器具にはこだわらず、電子天秤の上で作業する、という知恵があります。
実際に添加した重量を記録しておけるので、確実な作業履歴を残す上でもお勧めです。

PD-10の使い方

脱塩操作ではPD-10をよく使っています。
限外ろ過や透析より、こっちの方が確実ですね。

原理はゲルろ過で、こちらのサイトが分かりやすいです。
担体はSephadex G-25ですので、分子量1,000以下のものを除去するのに最適です。

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まずは先っぽを切ります。これが硬くて。
私はくるくる回しながらカッターで切っていますが、無理やり切ると怪我の元です。
ニッパーが良いんでしょうけど、バイオ系の実験室には置いていないことが多いです。

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次にスタンドに取り付けて、バッファーで平衡化します。
このLabMate PD-10 Buffer reservoirってのがなかなか手に入らなくて苦労してるんですよ。洗って使い回しています。

PD-10-1

リザーバー上部の線までバッファー(約25mL)を注いで、放置します。
重力でバッファーが全部落ちるのを待ちます。10分ぐらいかな。
この時Sephadex G-25の上に乗っているフィルターのおかげで、液がなくなると落下がぴたっと止まります。
これが優れもの。空気が入る心配がありません。

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リザーバーを外して、フィルターの上にサンプルを乗せます。
今回はBlue Dextranと食紅の混合物0.5mLを乗せてみました。
既に分離が始まっているのが見えます。

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サンプルと合計で2.5mLになるように、バッファーをアプライします。
今回はサンプルが0.5mLなので、2mL。
高分子量のBlue Dextranが速く、低分子量の食紅が遅く進んで、くっきり分かれているのがよく見えます。

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回収用容器をセットして、さらに2mLのバッファーをアプライします。
サンプル0.5mLの場合は2mLでだいたい全部回収できます。
サンプルがもっと多い場合は、それに合わせて溶出量をもっと増やします。

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もっと流し続ければ、低分子量の部分も回収できますけど、だいたいはこのままゴミ箱にぽいっと捨ててしまいます。
もちろん廃棄は各自治体で指定された方法で。

塩とかグリセリンが入った市販の酵素や抗体を、単純なリン酸バッファーに置換したり、
抗体を還元剤で処理した後、還元剤を除去したり、
抗体と蛍光標識試薬を結合させた後、未反応の標識試薬を除去したり、
酵素に架橋剤を結合した後、未反応の架橋剤を除去したりと、
日常的に大活躍です。

酵素や抗体は肉眼では見えないので、アプライする液量と溶出量は予備検討して決めます。
そのためにBlue Dextranを常備しています。
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