診断薬開発雑記

臨床検査試薬を開発するバイオ技術のブログ。誰かの役に立つかもしれない事を思い付くままに書いています。

2018年01月

デフォルメも方便、だけどね…

測定原理図の話の続き。
図を描くときには、実際の大きさは無視して、頭でイメージしやすいようにデフォルメするようにしています。
とはいえ、どうせ見えないからって適当なことを描いている訳じゃないのです。

このような事は、科学の世界ではよくやることです。
例えば原子の概念図:

原子

実際には原子や電子は点にしか見えないほど小さく、離れているのをあえて手頃な球にして、さらに存在確率でしかない軌道まで円にして書いているのです。

もう一つの例として太陽系:

太陽系

これも本当は太陽の大きさに比べれば、地球は1/100ぐらいで、木星や土星なんて遙か遠くの小さい球、ぐらいのスケールなのです。

このようにミクロの世界でもマクロの世界でも、説明のためあえてにこういう絵にしているのです。

同じように、イムノアッセイの測定原理図も大きさは無視しています。
以前、抗体とインスリンの大きさ比較をしましたが、

ins

抗原がステロイドやサイロキシンならば、もっと小さく、
抗原がIgMとかの巨大タンパク質なら、抗体よりずっと大きくなります。
これを原寸大にこだわって、同じ比率で拡大縮小していたら、かえってわかりにくい図になってしまいます。

もっと端的な例といえば、固相。
最も小さい診断薬用ラテックスの粒径が0.1~0.2μmぐらいですから、数nmの抗体より100倍ぐらい大きいんです。
コロッケに付いているパン粉、ぐらいなものでしょうか。

だから測定原理図は、あえて見やすい絵になるように、適当な大きさにデフォルメして書いているのです。
必要なことなんですよ。

測定原理図3

実際の大きさは頭の片隅に置いておくようにしてくださいね。
たまに測定原理図をそのまま信じ込んで、
「勉強が足らーん!」って言われちゃう人、います。

測定原理図を描いてみよう

さて、これまで実験的な技術の話をメインに書いてきました。
それも大事ですが、個人的に同じぐらい重要だと思っていることがあります。

それは、技術を人に伝えること。
私たち技術者も例外ではありません。
仕事仲間に、お客様に、色んな場面でプレゼンテーションする事や、ディスカッションする場面があります。
わかってもらうこと、これも大事な技術です。

まずは測定原理図をどんどん描いてみることをお勧めしようかと思います。

文章で書くより、絵で描いた方が、頭の中でイメージしやすいんです。
例えば添付文書に良く書いてあるように:

「固相に結合した抗××抗体が検体中の××抗原と結合し、次に〇〇標識した抗××抗体と結合します。過剰の〇〇標識抗××抗体を洗浄して除去した後、〇〇標識を測定します。」

と書くより、
測定原理図2

と描いた方が、
  • どこに何があって
  • どう繋がっているか
見ただけで分かるから、理解しやすいのです。

文字なんて飾りです。意味が分かれば良いんです。
あえて入れるならこの程度。

測定原理図3

プレゼン得意な人は、もっと上手な図を描いているでしょう。
あれは天性の才能を持っている訳ではなくて、日頃からたくさん描いて練習しているんですよ。

ちょっと凝った描き方をするのは、練習を重ねてから。
基本は一緒です。
測定原理図1
できるようになること、これがスキルです。
丸と四角と線が描ければそれでいいんです。
美術の成績なんか、2で良いんです。
ノートの隅の落書きでも良いんです。

ひたすら練習あるのみです。

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