さて、それではイムノアッセイ系のデザインについて書いていきます。
まずは一般的なELISAの測定系を作ってみましょう。

ELISAをやるには、まず抗体を固相に結合する必要があります。固相化とか感作という言葉を使っています。
一般的には96穴マイクロプレートを使います。

96-hira370
このプレートに抗体を結合するのに、タンパク質の吸着現象を利用するのが最も
簡単です。
①抗体をリン酸緩衝液等で1μg/mLぐらいに希釈します。
②各ウェルに100μLずつ分注します。
③1時間~一晩静置します。
 これだけで抗体がウェルの底や側面に自然にくっつくのです。
④分注した液を捨て、0.1%BSA(ウシ血清アルブミン)溶液を200μL分注し、1時間~一晩静置します。

④はブロッキングと呼ばれる作業です。過剰量のタンパク質を接触させることでマイクロプレートにタンパク質を目一杯吸着させて飽和状態にしておきます。
これをやっておかないと、抗原が抗体ではなくマイクロプレートに吸着してしまい、イムノアッセイ系が成り立たなくなる恐れがあります。

IgG固相化1

このように、抗体液を入れて放っておくだけで抗体は固相(ここではマイクロプレートのウェル)に結合するのです。
タンパク質の吸着現象については、高分子の医療応用研究でかなりメジャーなテーマとして扱われています。生物工学の分野です。

さて、先ほどの絵では抗体が着地に成功、みたいに描いていますが、そう上手くはいかないでしょう。
体操選手が着地に成功するのは一生懸命に練習しているから。いくらFc部位が疎水性が高く、プラスチック表面に吸着しやすい性質とはいえ、失敗する方が普通でしょう。

IgG固相化2

このように。実際はもっとぐちゃっと崩れたりして。
ウェルの面積から、吸着する抗体の量を計算して、そこに結合できる抗原の量を算出するとができるのですが、実際ELISAをやってみるとトラップする抗原量は、計算量よりずっと少なくなります。
要するに活性を持たない抗体がたくさんあると思われます。それは着地に失敗しちゃって結合活性を失った抗体がいっぱい出てくるからじゃないか?と考えています。

ちなみにFc部位を切断した、F(ab')2でも同じ方法で固相化できます。
Fab2固相化

Fabにしても固相化できます。
でも結合活性はかなり低くなります。

Fab固相化

僕らの経験では、
なぜか知らないけど、タンパク質を単純な方法で固相化するとほとんど死ぬんですよ。生き残る方が少ないぐらい。
それはこういうことなんじゃないかと考察している訳です。