それでは抗体に標識する方法を説明していきます。
低分子量の蛍光物質や、ビオチンなんかをよく付けます。
イムノアッセイでは検出できるものをくっつける時に「標識する」と言いますので、ビオチンを付けてそれを固相抗体に利用する場合には、「標識する」と言いません。
まあ、そんな固い事言わなくてもいいじゃない、と思いますけど。

まずは一番ポピュラーな、抗体のアミノ基に標識する方法。

タンパク質のアミノ酸配列には普通、リジンがいくつも入っています。
それらが親水性が高くてタンパク質表面にアミノ基が出た形になっていますので、タンパク質の表面にはアミノ基がたくさんある訳です。

で、僕らは普通、蛍光色素やビオチンを直接アミノ基に付けたりはしていません。
NHS基の付いた蛍光色素や、
NHS基の付いたビオチンを買ってきて、抗体と混ぜているのです。
NHSとは「N-Hydroxysuccinimide」の略で、アミンと置き換わってアミド結合を作る官能基です。
NHS基が付いた「標識試薬」がたくさん売られています。

手順としてはだいたい以下の通りです。
① 抗体を定量して、モル数を計算する。
F(ab')2なら吸光度を測定し、1.48で割ってmg/mL濃度を計算して、分子量100,000で割って体積を掛けます。
② 標識試薬を溶かす
だいたい有機溶媒に溶かします。どんな溶媒に溶けるかは事前に確認しておきましょう。
③ 抗体に標識試薬を添加
抗体のモル数の10倍くらいになるように計算して標識試薬を入れ、良く混合します。
④ 脱塩
抗体に結合しなかった、余分な標識試薬を脱塩カラム(PD-10など)を使って除去します。

標識1

これで完成。抗体は加工するときにはmg単位で扱いますが、イムノアッセイや組織染色ではμgやngの単位で扱いますので、数千倍に希釈して使うのが普通です。

アミノ基に標識する方法は、一長一短があります。
長所は、簡便で、抗体だけでなくどんなタンパク質にも適用できるところ。
短所は、アミノ基にランダムに結合する所。アミノ基はタンパク質にいくつもあり、どこに付くかは確率の問題です。
抗原認識部位(CDR)のアミノ基が標識されてしまって抗体の特異性に影響する可能性があります。

このような性質のため、特異性が大事なイムノアッセイに使うよりは、量が大事な組織染色やウエスタンブロットのような用途でよく用いられる標識方法です。