抗体のFc部位を利用した特殊な感作技術もありますが、Confidentialなのでここでは書かない事にします。
診断薬用の抗体は、多くの場合ペプシンで消化して、Fc部位を除去したF(ab')2にプロセスします。
今回はその具体的な方法を紹介します。

Pepsin

1. 消化用の緩衝液を用意
酸性の緩衝液を用意します。
同人化学研究所のプロトコルによれば、pH4.5の酢酸緩衝液、
別の文献によれば、pH3.5のクエン酸緩衝液、と様々ですが、
実は抗体のクローンによって至適条件が違います。

2. 抗体を消化用緩衝液に置換
抗体を酸性の緩衝液に置換します。
これには色々な方法があり、どれでもOKです。
透析、脱塩カラム(PD-10みたいな)、限外濾過、など。
最終的に抗体濃度を1mg/mLぐらいにします。

3. ペプシンを溶解
ペプシンを数mg秤量し、酸性の緩衝液で1mg/mLぐらいになるように溶解します。
ペプシンは必ず、消化するpHの緩衝液で溶解してください。中性にするとペプシンは不可逆的に壊れるからです。
なお、ペプシンは自己消化を起こしますので、この作業は消化の直前に行います。

4. 消化
抗体にペプシンを添加して、37℃で保温します。
添加量は抗体量の1/10~1/100ぐらい。
時間は30分~1晩ぐらい。
これも抗体のクローンによって至適条件が異なります。

5. 消化の終了
pHを中性~弱アルカリ性にすれば消化は止まります。
ペプシンはpH6以上で不活性化するといわれていますので、Trisなどの塩基を加えてpH7以上にします。

5. ゲルろ過
SephacrylやSuperdexのような、抗体分画に適したゲルろ過カラムに通し、100kDa付近に出てくるF(ab')2の分画を回収します。それより低分子量の分画には、Fc断片や血清・腹水由来のコンタミがありますので、ここで分離・除去します。
この時、クロマト用のバッファーは20mM位のリン酸緩衝液(pH7.0、脱気済み)が一般的です。プロセスの邪魔になるような余計な添加物は入れない方が良いと思います。
「はじめての抗体精製ハンドブック」で勉強しておきましょう。
AKTAとか使うと簡単です。

これでF(ab')2の精製は完了です。
実はこの中に色々ノウハウがありますので、次回に続きます。